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在宅ホスピスケアセンター

変形性膝関節症MRI診断と治療

 厚労省の調査では日本の変形性膝関節症の患者数は約800万人と推定されており、50歳代以上の女性の約74%、男性の約53%がこの病気に罹かっているとされています。

 変形性膝関節症は加齢、肥満、怪我などをきっかけに、車に例えるとタイヤにあたる関節軟骨がすり減って痛みが生じる病気です。軟骨のすり減りによって、関節の炎症が起こると水が溜まったり、骨の角の部分に骨棘と呼ばれる骨のトゲができて関節の形が変わってきます。ついには進行して骨もすり減って、O脚やX脚となり荷重時のバランスが取りにくくなり歩行が難しくなることもあります。

 この病気の診断は膝の診察とレントゲン写真で容易にできます。しかしレントゲン写真やCTでは関節の骨のカタチの変化しか分かりません。膝関節を構成している筋肉、半月板、関節軟骨、関節の膜などの状態や骨の性状などの病態の把握にはMRIが必須です(表1)。膝関節のMRIでは、関節軟骨のしり減り状態・菲薄化、水が溜まっているかどうか、関節滑膜の腫れ・腫瘍の有無、半月板の変性(質の低下)・断裂・正常な位置からの逸脱、骨の質的異常すなわち骨髄の浮腫(腫れ)・骨梁の損傷(微細な骨折)・骨壊死(骨内部の血の通いが悪くなり骨の細胞が死んだ状態)、靭帯の変性・ゆるみ・断裂・腫脹、筋肉の萎縮・断裂・血腫の存在などを詳しく調べることができます。(表2)。

 治療法には手術療法と手術以外の保存的治療法、ダイエット、有酸素運動などの生活指導などがあります。

 保存的療法には鍼灸治療・温熱療法・低周波・極超短波・ホットパックなどの物理療法、筋力強化・可動域改善などのリハビリテーション、消炎鎮痛剤その他の飲み薬、ヒアルロン酸・ステロイドホルモン剤などの関節内注射などがあります。また保険適応が認められておらず、限られた医療施設でないと受けられず、自己負担となりますが、血小板の成分を関節内に注射するPRP(多血小板血漿)療法・APS(自己蛋白質溶液)療法などもあります。これらの保存的治療法は関節軟骨のすり減りが軽度な初期の症例に有効性が高いと思われますが、手術をしたくない進行した症例にもある程度の効果はあると思われます。

 手術治療では半月板の断裂片や骨のかけらが関節内に陥頓(引っかかって痛みや動きの制限を起こすこと)する症例では関節鏡(内視鏡)での摘出手術や関節内の掃除が勧められます。片側の関節軟骨のすり減りだけでなく骨の浮腫、骨梁の損傷、骨壊死などが見られる場合は高位脛骨骨切り術(関節軟骨の正常な側で体重が支えられるように下腿の骨を切り膝関節の大腿骨と下腿骨の位置関係を正常化する手術)、片側の人工関節置換術(内側あるいは外側の一側のみを人工関節に替える手術)などが適応となります。

 軟骨だけでなく骨のすり減りも進みO脚やX脚が進み歩くことが難しくなった人でも全人工関節置換術によって歩きやすくなり、症状は大変良くなります。

 保存的療法の効果の予測やどのような手術方法を選択するかの判断にはMRIによる関節軟骨のすり減り程度、骨の質的状態の評価、半月板の断裂や変性の度合い、靭帯の腫脹や断裂の状態、周囲筋肉の状態等の詳細な診断が大変有用であり、中高年の膝関節痛の患者様にはMRIの検査をお勧めいたします。

表1 

           MRI                  CT・レントゲン

評価可能な膝の組織  関節軟骨、半月板靭帯、骨、筋肉     骨

得られる情報     組織の腫脹、摩耗弛緩、断裂などの病態  組織(骨)の形状

 

 

表2

関節軟骨   軟骨のすり減り状態、菲薄化や欠損

関節内    関節内の水、関節滑膜の腫脹、腫瘤

半月板    変性や断裂の程度や状態、正常な位置からの逸脱状態

骨      CTやレントゲンで分からない骨髄浮腫、骨梁の損傷、骨壊死、

       骨嚢胞(骨内の水や脂肪の溜まったところ)などの確認

靭帯、筋肉  靭帯の変性、ゆるみ断裂、腫脹

       筋肉の萎縮、断裂、血腫の存在

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膝のMRI画像

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